営業戦略の柱「お客様本位」とは消費者の権利を尊重し実践すること

By suzuki
57歳の新人・鈴木啓司

57歳の新人・鈴木啓司

2011.7.6

こんにちは。

i-support代表、株式会社アイブリッジ顧問の鈴木啓司です。

今回は、わかっているようでわかっていない営業戦略の柱「お客様本位」についてお伝えします。

◆わかっているようでわかっていない「お客様本位」

多くの企業が営業戦略の柱として経営理念に掲げている「お客様本位」をわかっているようでわかっていなかったのは私自身でした。
私の恥を晒しつつ、やっと掴んだ気付きをお伝えしていこうと思います。

お客様本位という言葉は、今日の日本では聴きなれた、優良企業の多くが掲げるスタンダードな標語といっても良いでしょう。

お客様本位はバブル崩壊後の1990年代から、CS(カスタマー・サティスファクション)の顧客満足とセットで盛んに取り上げられるようになりました。

前職の会社は日本中でトップクラスの「お客様本位」を実践する会社でした。

まず、社長挨拶では、

~ここから~
当社は、「お客さま本位の安心と補償をお届けし、最も身近で信頼される〇〇〇〇会社を目指す」ことを経営理念として掲げ、その実現を図っていくため、諸施策を実行してまいりました。
〇〇〇〇年度にスタートしました5ヵ年の中期経営計画におきましては、「強固な内部統制を土台とした○○○○サービス業への再創造」「お客さま本位における業界トップランナーの位置を占める企業となること」を目指す姿として明確化し、商品・サービス、組織、業務のあり方等すべてをお客さまの視点で見直し、お客さま本位のビジネスモデルをさらに発展させるためにさまざまな課題に取り組んでまいりました。
・・・中略・・・
これからも、当社は、経営理念の実現に向け、コンプライアンスと適正な業務運営の徹底を図り、最も誠実で真面目な、また内部統制が最も貫かれた「お客さま本位の〇〇〇〇会社」として、あらゆる業務について、お客さまの声に基づいた改善に継続して取り組んでまいります。
お客さま本位のトップランナー企業の実現を目指し、全社一丸となって努力していく所存でございます。
~ここまで~

社長がお客様本意のトップランナーになるとコミットメントしています。

そして、経営の魂といえる「経営理念」では、

~ここから~
「〇〇〇〇は、お客さま本位の安心と補償をお届けし、最も身近で信頼される〇〇〇〇会社を目指します。」
安心を実感していただける的確で誠実な対応を常に心がけ、お客さまにとってわかりやすい商品とご満足いただけるサービスを提供します。
代理店の自主性・独立性を尊重するとともに、お客さま本位の価値観を共有し、相互の発展をはかります。
従業員一人ひとりがお客さま本位を実践し、いきいきと働くことができる企業風土を築きます。
~ここまで(抜粋)~

それこそ、「お客様本位」のオンパレードです。

さらに、ここでは詳細は省きますが、お客さま本位で最も身近で信頼されるために、営業方法として「お客さま信頼スタンダード」という基準まで作成し、それをもとに、代理店手数料体系を「規模」から「機能」、「量」から「質」へお客様視点の手数料体系に変更するという徹底ぶりです。

このような会社で、営業所長、支社長、営業部長という立場で営業戦略の基本である「お客様本位」と正面から向き合い理解を深め、社員・代理店さんまで正しく浸透するよう努めてきました。

我社は業界の「お客様本位」のトップランナーだぞ!と、意気天を衝く勢いでした。

掛け声も仕組みも縦横揃い、業績もうなぎ登り!のはずが。

これほど、全社をあげて営業戦略の柱である「お客様本位」を徹底したのに、残念ながら会社としての業績は横ばいがやっとの状況でした。

業界と業界における個社として「お客様本位」を考えた場合、非の打ちどころがないと思えるのに、お客さまの支持が思うように得られなかったのは何故だろう?

営業部長になっていた私は改めて「お客様本位」とはを見つめ直しました。

会社が打ち出し、年々改善してきた「お客様本位」は、私から見てもお客様視点にたったもので、営業最前線の現場での理解と徹底不足が原因としか考えられず、社員研修や代理店研修を強化しました。

そのような研修指導の中で、会社が定めた行動規範を眺めていて、「お客様本位」について衝撃的な発見をしたのです。

その行動規範の中の「行動指針」に、大切なキーワードを発見しました。

~ここから~
この行動指針は、当社の役職員として遵守すべき行動を具体的に定めるものです。

1. 人間尊重の原則

・人権の尊重・保護
人権を尊重し、国籍、人種、性別、年齢、思想、宗教、障害の有無等による差別は決して行いません。

お客さま本位の実践
常にお客さまに安心していただける的確で誠実な対応を行い、お客さまにとって分かりやすい商品とご満足いただけるサービスを提供します。
また、お客さまに対しては、各種法令等で定められた消費者の権利を尊重し、ご意見・苦情などには迅速かつ丁寧な対応を行います。

以下略~ここまで~

そのキーワードとは「消費者の権利」です。

自社が唱える「お客様本位」は業界目線でお客さま目線を捉えたものだったのでは?

もう一つ手前により大義となるものがあり、それが「消費者の権利」であり、自社が唱える「お客様本位」はそれと比べるとより小義であると気付きました。

営業部長ともあろうものが恥ずかしい限りです。

営業の端くれとして、1962年にジョン・F・ケネディによって提唱された、
消費者の4つの権利は知っていましたが、知るに留め、活かしていなかったのです。

◆消費者の権利とは(消費者庁:「2010ハンドブック」より抜粋)

消費者4つの権利とは、1962年に、ジョン・F・ケネディによって提唱された、
・安全である権利
・知らされる権利
・選択できる権利
・意見を反映させる権利

のことであり、
さらに、1975年ジェラルド・R・フォード によって、
・消費者教育を受ける権利
が追加され、消費者5つの権利とよばれました。

そして、1980年に国際消費者機構(CI)が、
・生活の基本的ニーズが保障される権利
・救済を求める権利
・健康な環境を求める権利
を追加し、消費者8つの権利とよばれました。

これを受けて、我が国においても、1968年に制定された消費者保護基本法が見直され、2004年6月2日、消費者基本法として公布・施行されました。

この消費者基本法の内容は、

まず、「基本理念の新設」として、

第2条1項にて、
・安全の確保
・選択の機会の確保
・必要な情報の確保
・教育の機会の確保
・消費者の意見の確保
・消費者被害の救済

消費者の権利として位置づけられています。

そして、「事業者の責務等の拡充」として、

① 事業者については、従来の規定に加えて、
・消費者の安全及び消費者との取引における公正の確保
・消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること
・消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること(適合性原則)等を責務とするとともに、環境の保全への配慮、自主行動基準の策定等による消費者の信頼の確保に努めること

が規定されました。

② 消費者については、自ら進んで、消費生活に関し必要な知識を修得し、必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努める旨が規定されました。これに加え、消費生活における環境の保全への配慮、知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めなければならない旨が規定されました。

③ また、今回の改正により事業者団体及び消費者団体に関する規定が新設されました。事業者団体は、事業者と消費者との間に生じた苦情処理の体制整備、事業者自らがその事業活動に関し遵守すべき基準の作成の支援その他の消費者の信頼を確保するための自主的な活動に努める一方、消費者団体は、情報の収集・提供、意見の表明、消費者に対する啓発・教育、消費者被害の防止・救済等、消費生活の安定・向上を図るための健全かつ自主的な活動に努める旨が規定されました。

さらに、「基本的施策の拡充・強化」として、

・安全確保の強化(危険な商品の回収、危険・危害情報の収集・提供の促進)
消費者契約の適正化の新設(契約締結時の情報提供や勧誘の適正化等)
・消費者教育の充実(学校、地域、家庭、職域など様々な場を通じた消費者教育の実施)
苦情処理及び紛争解決の促進の充実(都道府県・市町村がともに苦情処理のあっせんを実施等)
等の改正が行われました。

◆消費者の権利の尊重が「お客様本位」の基本

消費者の権利を理解するにつれ、「お客様本位」について、我社は我社はと言い過ぎたのではないかと反省させられました。

つまり、正しくは以下のように言わなければならなかったのではないか。

「我社は、国が消費者基本法で定めた「消費者の権利」を尊重します。」
消費者の権利を尊重するため、我社は「お客様本位」を実践し、業界における「お客様本位」のトップランナー企業の実現を目指します」
とすれば、お客さまにとっても、社員にとってもより明確に理解できます。

この気付きを得て、営業部のリーダーである私は、消費者の権利、つまり、お客様の権利を踏まえて、我社が唱える「お客様本位」を推進しました。

おかげで、コンプライアンスの徹底や契約の適正化において社員・代理店さんの理解も得て、大幅な改善がなされ、その後、在任中にあった社内外監査も無事に済み、業績も回復傾向となり、確かな手応えを掴むことができました。

こうした経験により、わかっているようでわかっていない「お客様本位」が、私自身やっと理解できたのです。

国に憲法があって民法があり、商法があり、約款があるように、消費者の権利を尊重する消費者基本法があって、「お客様本位」があるのだと。

「お客様本位」とは・・・の答えは、
お客様本位とは消費者の権利を尊重し実践すること」が私が辿り着いた結論です。

本日はここまでとします。

本日の気付き:

営業戦略の柱である「お客様本位」は消費者の権利を尊重する消費者基本法を理解することが前提。
まず、
消費者の権利ありきの「お客様本位」でなければならない。

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